『中川輝光の美術評論と制作日誌』

わたしのアトリエからの覚書になります

2010年1月30日(土)

靉光の代表作『目のある風景』

靉光の代表作『目のある風景』

ついでにというわけではないが、靉光の代表作『目のある風景』も紹介しておきましょう。『馬』も『目のある風景』も、描かれたものは靉光の分身だと、わたしは思っています。やせ細った「彷徨う馬」も、気味悪く「冷徹な眼」も、靉光その人に違いないのです。「靉光」、画名「靉川光郎」、本名・石村日郎の苦悩は時代の苦悩でもあり、「孤独な画家そのものの姿」と言わなければならない。戦時下特有の陰鬱な風の中で、佇む靉光の「純真さ」がこの作品に見て取れます。ともすると、その精神が引き裂かれかねない時代状況にあって、これほどまでに明確な『意志』を描いた絵は見たことがない。戦時下の画家にとって「抽象表現」は逃避に見られかねないが、この『冷徹な眼』は時代を明確に射抜いています、リアルそのものと言っていいのかもしれません。

作成者 『中川輝光』のアトリエから : 2010年1月30日(土) 14:51 [ コメント : 0]

靉光の油絵『馬』に潜む陰影

靉光の油絵『馬』に潜む陰影

画学生(70年安保)の頃、わたしは『萩原朔太郎』の詩から得た印象(イメージ)を絵にしていました。同じ頃に靉光の絵を見ていたこともあり、この二人を重ねて(ダブルイメージで)記憶しています。靉光は広島の画家ですが、上海の病院で「戦病死・享年40歳」しています。実家に置かれた作品も、被爆で大半焼失しています。ですから、この『馬』は数少ない遺作の1枚になります。この『馬』に潜む陰影は、朔太郎の言葉以上に語りかけてくるものがあります。当時は眠れない日々も多く、よく「夢にまで表れた絵」でもあるわけで、わたしには必ずしも「好きな絵」ではありません。昨晩、何故か「この絵の夢」を見たわけです。若き頃に受けた影響は、計り知れないものがあります。

作成者 『中川輝光』のアトリエから : 2010年1月30日(土) 14:50 [ コメント : 0]


2010年1月12日(火)

ウィリアム・ブレイクの絵と詩

ウィリアム・ブレイクの絵と詩

The Sick Rose

O Rose, thou art sick!
The invisible worm
That flies in the night,
In the howling storm,
Has found out thy bed
Of crimson joy,
And his dark secret love
Does thy life destroy.

「薔薇よおまえは病んでいる」とでも訳できるだろうか…。わたしたち創造の世界に住み続けていると、一種の『病』に犯されているのではないかと想う時がある。ウィリアム・ブレイクは言う、「表れるのはヴィジョンである」と・・・。神でも人間でもない「象徴としての形」が紙の上に表れるのである、彼はそのイメージを丁寧にひとつひとつ定着しているにすぎない。ウィリアム・ブレイクは明確な線にこだわる、線を描くのは「素描以上の意味(哲学)」がなければならないと考えた。だからこそ、手続きの多い油彩を嫌い、淡白な水彩や銅版にこだわる。晩年(60歳後半)ウィリアム・ブレイクの挿絵(ダンテの神曲)は、幻想の物語以上の境地すら見せるのである。小さな虫に食いつくされていく「薔薇」、ウィリアム・ブレイクその人の姿だろうと、容易に想像できる。

作成者 『中川輝光』のアトリエから : 2010年1月12日(火) 15:42 [ コメント : 0]

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